秋山

 この時期の気象遭難事例

 
1989年10月8日  立山連峰    中高年の10人のパーティーの内、8人が疲労凍死。(この時のメンバーは、経験が浅い方ばかりでした。)
2006年10月8日  後立山連峰   5人パーティーの内、2人が疲労凍死。(プロガイドによる引率登山でした。) この日は、他に2パーティーが穂高で遭難している。
 

          
  2006年10月6日      2006年10月7日     2006年10月8日 
   『秋の嵐』       『暴風、記録的大雨』    『根室42.2m/s』

 天気図から見ても分かるように、完全な冬型の西高東低の気圧配置です。6日『秋の嵐』 7日『暴風、記録的大雨』 8日『根室42.2m/s』
でいかに荒天であったかが分かります。この表現は、平地の天気のものです。一般的に山での天候は、平地の天候に比べて、崩れるのも早く、回復するのは遅くなります。
この荒天で、白馬付近では一晩に相当の降雪と積雪があったようです。

 この日は、穂高でも2件の気象遭難事故が発生しています。

 一件については、救助隊と穂高小屋で対応して、奇跡的に無事救出しています。その時の遭難救助活動をビデオで見ましたが、穂高の稜線は、新雪が積もり、気象もかなり厳しい感じがしました。ビデオを見て、率直な感想は、『よく助かった。がんばった。』でした。次に感じたことは、穂高小屋からの下山はかなり厳しいだろうなというものでした。

 やはり、お客様をガイドする場合は、個人山行と比較すると、格段に慎重になります。
お客様も、高いお金を支払って、『安全と安心、そして、山の感動を求めて』参加していただいていると考えております。

 安全で安心できる山行と『自然の中で』のふれあいに、感動していただけるようなガイドを努めてまいります。

最も怖いのは、高山の秋山

 登山において、最も危険な状態は、「何が危険なのかを認識できていない状態」です。
 最も分かりやすい事例では、10月上旬の疲労凍死による遭難事故です。
10月上旬といえば、九州では、まだ紅葉の時期には、1ケ月近くもあり、やっと涼しくなってきたという程度ですが、北アルプスなどの高山では、10月に入ると一晩で、数十cmの降雪も珍しくありません。

 たとえ積雪がなくとも、前夜の雨が、明け方の冷え込みのために、凍りつき、岩などに薄い氷の膜(ベルグラ)ができることがあります。
こうなってしまうと、アイゼンとピッケルなしでの歩行は困難です。
 このような場合は、不安定な薄い積雪のために、厳冬期以上の難しさが要求されるケースも稀でありません。
 
 そして、この時期は、なによりも登山者の精神面が、高山の季節の変化に追いつくことができません
そのことを理解している登山者は、10月を過ぎてからは、安易に高山へ登ることはありません。
安全管理ができている登山者は、ある意味、厳冬期以上の厳しさ困難さが、この時期の高山には内在していることを認識しています。

春山

 2009年4月26日、黒部の登攀で知られるクライマー伊藤達夫さんが、引率していた学生2名とともに、北アルプス後立山連峰・鳴沢岳(2641メートル)で遭難死されました。
伊藤さんがこれまで、行われてきた登山と比較すれば、技術的には易しいものであったと思います。
 なぜ、あれほどの登山家が遭難されたのか、ネット上のみとなりますが、自分なりに調べてみました。

 4月25日は、「関西電力黒四管理事務所によると、25日午前10時に黒部ダムは気温6度、雨だった。」、「同日正午、立山室堂(2450メートル)は零下5・1度、平均風速13・5メートル。終日吹雪で、立山高原バスは積雪のため、この日から2日間運休している。」という天気概況でした。

 私もこの日は、宮崎県西臼杵郡日之影町にいましたが、雨こそ降っていませんでしたが、かなり強い風が断続的に吹いていました。
翌26日は、加納山と五葉岳に登っていますが、風もあり、真冬に戻ったように寒い一日でした。

 元文部科学省登山研修所所長の柳沢昭夫・大町市立大町山岳博物館長は、「真冬より残雪期の方が怖いのは、悪天候の時に雨やみぞれで体をぬらすことだ。ぬれて風に吹かれると、どんなに強い人でも1時間ともたないだろう」と語る。いったん体温が下がり始めると、急速に致命的な事態に至るとされる。低体温症、そして凍死の恐怖だ。
http://mytown.asahi.com/nagano/news.php?k_id=21000000904290003 より抜粋

 はっきりとした原因は分かりませんが、3名とも外傷もないことから、濡れによる急速な低体温症における疲労凍死と考えられます。
しかもい、3名の内、2名は雪洞内部で発見されています。いかに濡れが急速に体温を奪うということです。

 この日は、九州の山でも雪が降っています。四国の石鎚山では、吹雪だったようです。
今回の事故を教訓として、より安全な登山を心がけたいと思っています。

参考 : 気象人 http://www.weathermap.co.jp/kishojin/index.php

2009年4月25日(土)
2009年4月25日 天気図
2009年4月25日 衛星画像

天気(9時) 最低気温 最高気温

札幌

3.2 ℃

12.1 ℃

仙台

8.4 ℃

9.8 ℃

新潟

9.8 ℃

14.2 ℃

東京

10.0 ℃

13.2 ℃

名古屋

13.2 ℃

16.7 ℃

大阪

13.7 ℃

17.0 ℃

広島

12.5 ℃

18.3 ℃

高知

13.8 ℃

23.8 ℃

福岡

14.0 ℃

19.8 ℃

那覇

22.4 ℃

25.5 ℃

『雨 強まる』
▲ 最低気温は9時まで、最高気温は21時までのデータです。
低気圧が紀伊半島沖を発達しながら東進、広範囲で雨。
■1時間降水量の日最大値
福江47.5ミリ(02:10)4月1位
屋久島42.0ミリ(01:50)、上大津(長崎)41.0ミリ(02:20)
潮岬36.0ミリ(11:40)、大瀬戸(長崎)32.5ミリ(02:50)
内之浦(鹿児島)30.5ミリ(06:10)
中甑(鹿児島)30.0ミリ(04:00)

■3時間降水量の日最大値
福江101.0ミリ(02:30)4月1位
屋久島98.0ミリ(03:40)
上大津(長崎)78.0ミリ(02:50)
潮岬76.0ミリ(12:00)、三宅島72.5ミリ(16:20)4月1位

■日降水量
屋久島184.5ミリ、潮岬123.5ミリ、鳥羽(三重)115.0ミリs
三宅島115.0ミリ、内之浦(鹿児島)105.0ミリ
日和佐(徳島)103.0ミリ、新宮(和歌山)102.5ミリ
福江102.5ミリ、三宅坪田(東京)98.5ミリ、
東京(大手町)でも61.0ミリに達した。

■日最大瞬間風速
内之浦(鹿児島)NW28.2m/s(21:50)
伊良湖E28.1m/s(14:44)、雲仙岳SE27.5m/s(02:55)
八丈島SSW27.0m/s(14:49)
三宅坪田(東京)SSW26.2m/s(17:12)
室戸岬NE26.1m/s(09:45)
最高気温 全国的に平年を下回った。
      中でも関東は特に低め。
     秩父10.0℃(平年差−11℃)2月下
     前橋10.6℃(同−10℃)3月上
     熊谷11.2℃(同−10℃)3月上
     東京11.6℃(同−9℃)3月上

     そのほか、仙台は平年差−7℃、
      金沢12.7℃は同−6℃。


最低気温 関東から北の各地は、
      平年を2℃前後下回った。

     一方、東海から西日本にかけては、
      平年を2℃前後上回る気温。
2009年4月26日(日)
2009年4月26日 天気図
2009年4月26日 衛星画像

天気(9時) 最低気温 最高気温

札幌

1.5 ℃

6.5 ℃

仙台

9.4 ℃

16.0 ℃

新潟

10.1 ℃

14.6 ℃

東京

快晴

11.5 ℃

22.7 ℃

名古屋

11.6 ℃

17.0 ℃

大阪

11.5 ℃

15.0 ℃

広島

にわか雨

10.9 ℃

16.1 ℃

高知

11.2 ℃

19.4 ℃

福岡

11.4 ℃

14.9 ℃

那覇

17.5 ℃

20.6 ℃

『風も強まる』
▲ 最低気温は9時まで、最高気温は21時までのデータです。
三陸沖で低気圧が発達、東北や北海道で大雨(東部は大雪)、
全国的に風も強い。

■1時間降水量の日最大値
小本(岩手)29.5ミリ(01:50)4月1位
普代(岩手)23.0ミリ(02:00)
種市(岩手)22.5ミリ(01:10)4月1位
登別(胆振)20.5ミリ(17:00)4月1位

■24時間降水量の日最大値
小本(岩手)211.5ミリ(13:30)4月1位
普代(岩手)196.0ミリ(14:20)4月1位
屋久島182.0ミリ(00:10)
久慈(岩手)151.0ミリ(16:50)4月1位
種市(岩手)151.0ミリ(17:40)4月1位
川汲(渡島)138.5ミリ(20:50)4月1位

■日降水量
小本(岩手)169.0ミリ(4月1位)
普代(岩手)160.5ミリ(4月1位)
種市(岩手)135.5ミリ(4月1位)
川汲(渡島)130.0ミリ(4月1位)
久慈(岩手)127.5ミリ(4月1位)
八戸109.5ミリ(4月1位)
大和山(青森)101.0ミリ(4月1位)
むつ(青森)100.0ミリ(4月1位)
大間(青森)97.5ミリ(4月1位)

■日最大風速
えりも岬(日高)NNE34.3m/s(17:32)4月1位
友ケ島(和歌山)WNW23.0m/s(03:50)
納沙布(根室)ENE21.7m/s(21:11)4月1位

■日最大瞬間風速
えりも岬(日高)NNE45.7m/s(17:25)
西郷岬WNW31.9m/s(05:44)
友ケ島(和歌山)WNW31.4m/s (03:41)
西郷W30.3m/s(06:38)、巻(新潟)W29.5m/s(15:20)
浦河ENE28.5m/s(17:56)、和歌山WNW28.2m/s(04:09)
小国(山形)SW27.8m/s(20:11)
酸ケ湯(青森)ESE27.8m/s(09:12)
最高気温 関東は平年差+2℃前後、
     前日差+10℃以上
     という所もあったが、
     全国的には大半の地点で平年以下。
      札幌6.5℃(平年差−7℃)3月下
      青森7.4℃(同−8℃)3月下
      松江11.5℃(平年差−9℃)3月中
      大阪15.0℃(同−7℃)3月下
      松山16.1℃(同−5℃)4月上
      鹿児島18.0℃(同−5℃)3月下
      那覇20.6℃(同−5℃)3月上


最低気温 平年差±2℃以内の所が多い。