(社)山岳ガイド協会 山岳ガイド講習会
2008.6.13 〜 6.17
参考HP
勝野アルパインガイド事務所
エキスパートテクニックの改訂版
アルパインクライミングホームページ
登攀技術・気象
登山のテクニックがとても参考になります。絵で解説されているのでとても分かりやすいです。
○ ショートロープ
1.ロープをいったん全部伸ばして、キンクをとる。
2.末端をハーネスにフィギュア・エイト・ノット(末端処理も行う)で結ぶ。
3.ガイディングに要する最大の長さを残し、ハーネスのビレーループ結んだ方のロープをザックに絡まないよう
に押し込んで入れる。ザックの中身は、大型のスタッフバックで整理して、内部でロープが絡まないようにする。
4.ループを作る前に、ザックから伸びているロープにビレーループに環付カラビナでフィギュア・エイト・ノット
(末端処理も行う)で結ぶ。
7mのみ残して、ループ状にして体に巻きつけておく。
ループ状には、首からロープを下げて、肩を通さずにループ状巻いていく。その長さが短くても長くてもいけない。
テンションがかかった場合に、腰にくるように、ビレーループを通して、オーバーハンドノットで処理する。
その上で、肩にループ状のロープを通す。
5.クライアント(1人の場合)のハーネスにフィギュア・エイト・ノット(末端処理も行う)で結ぶ。
6.クライアントとガイド間のロープの長さは、約7m。
クライアント側のロープを確保した状態で、ガイド側のロープを3巻きにする。
その3巻きのループをクライアント側のロープで手のひらに締めこむ。
その際、クライアント側のロープは、必ず手の内側にしなければならない。
左右の手で、ロープを持ち帰る際も必ず手の内側にクライアント側のロープを持ってくる。
7.クライアントとガイドの距離は、手を伸ばせば届く範囲(=ショートロープ)とする。
危険箇所では、そのロープを張った状態(=タイトロープ)にする。
クライアントがバランスを崩したした場合は、「クライアント」と「ガイドが手に持って絞め殺しているロープ」と
「ガイドが肩にループにしているロープ」が、一直線状に張った状態にならなければいけない。
その体制で、クライアントのバランスを立て直す。
8.タイトな状態でなければ、そのまま滑落の危険性が出てくる。危険箇所では、常にタイト。
自信がなければ、スタッカットもしくは、岩角や鎖などでロープの屈曲させながら行動する。
9.ロープの持ち替え
ロープは、常に滑落する可能性がある方向を考え、左右の手で持ち変える。
トラバースの場合は、必ずガイドは、谷側の手でロープを確保する。
クライアントからのロープは、山側からガイドに伸びている。
もしその逆の場合は、ガイドもクライアントもロープに引かれて体が反転してしまう。
急傾斜の持ち替えの場合は、ロープを地面の方に下げると同時にまたいでロープを持変える。
その際、クライアント側のロープは、必ず手の内側にしなければならない。
○ 懸垂下降
1.基本的には、クライアントを先にロワーダウンでおろす。
その際、ガイドが懸垂することを考え、ロープを支点に通した上で、その支点からムンター・ヒッチ
(もしくは、下降器使用でロワーダウンさせる。
ムンター・ヒッチをミュールノットで仮固定して、クライアントの確保を行う。その状態で、クライアント
が加重を抜くことができれば、ロープ2本で懸垂下降を行う。加重を抜くことができない場合は、1本
のみで懸垂下降を行う。必ず仮固定を解除する前に、下降器(ムンター・ヒッチ)をセットして、解除する際は、
緩みによる衝撃を考慮しなければならない。
ロワーダウンさせる時は、支点のスリングには、
テンションはかからない。
2.下降地点が不安定であったり、下降後のルートが不明な場合は、ガイドが先に懸垂下降を行う。
その場合は、事前にロープにクライアントの下降器をセットしておく。
ガイドの懸垂が左右にずれることを考慮して、そのふれに対しての影響を軽減する工夫を行う。
クライアントが懸垂する際は、必ずロープを確保して万一の場合の備える。もしくは、完全にガイド
がクライアントの下降をコントロールしても良い。
ハーネスのビレーループに直接に下降器をセットしていません。
120cmのスリングを使い、自己ビレーと下降器のセットを同時に
行っています。ポイントは、下降器を連結している環付カラビナが、
スリングの結び目からずれているところです。これで、格段に操作性が
が向上します。ビレーループから下降器までの距離(環付カラビナ含む)
は、20cm程度。
3.ガイドがクライムダウンできるようなケースでのクライアントの懸垂下降は、必要であれば、シングルロープいっぱい にロワーダウンさせたほうが良い。その場合、ガイドは、常にクライアントとタイトにロープを張るためにロープを振り 分けしながらクライムダウンを行う。
ただし、この技術は、ガイドが絶対に落ちないという前提での技術。少しでも不安があれば行うべきではない。
○ ハーネス利用のザック搬送
1.レッグループ付きのハーネスとザックによる搬送技術
用意するもの
・ ザック
・ レッグループ付きのハーネス
・ 60cmスリング2本
・ 短いクイックドロー
高い位置で担ぐようになるので、従来のザック搬送より
かなり楽です。
○ フィックスロープの張り方
1.フィックスロープを張る場合は、岩から1m以離れないようにする。
2.ロープをザックに入れて、引き出しながら支点を設置して、カラビナをかけてそのままロープを引っ張 りながら行く。固定は、戻るときに行う。
3.可能な限り、新規のハーケン等は使わず、残置ハーケンや自然の岩や木から支点を求める。
4.スリングは、引かれる方向を考える。
5.スリングのタイオフ(ガースヒッチ)は、なるべく行わない。
6.スリングをナッツ代わりにも応用可能。
7.最後の支点は、固定す作業も考慮して、ロープにかなり余裕を持たせて固定する。
長すぎた場合は、最初の支点で調整可能。
8.フィックス作業中に、クライアントにその内容を説明の上、必要であれば確保を取り、むやみに動か ないことを伝える。この間に、女性はトイレなどに行く可能性がよくある。危険箇所の注意を怠らない こと。
9.クローブ・ヒッチは、環付カラビナで固定する。クローブ・ヒッチの流れに注意。
10バタフライ・ノットは、ロープの枝を長くするところに有効。
11.メインロープで直接固定する場合は、ダブルフィギュア・エイト・ノットが早い。
○ 簡易ハーネス
1.120cmスリングを使用してのチェストハーネス。シートベントで処理する。
片方を肩からもう片方を脇の下から
2.メインロープにフルボディーハーネス
結びをオバーハンドノットで処理する。
3.補助ロープ(7m)によるフルボディーハーネス
補助ロープの長さは、7m程
○ スタンディングアックスビレー
1.やわらかい雪面の傾斜をピッケルでカットする。カットする際は、山側に立って谷側の雪面をピッ ケルを振り切るようにしてカットする。その際、左右に振りぬくような形をとる。
2.60cmのスリングと大型環付カラビナを用意する。
60cmのスリングを二重にして、ピッケルのシャフトに巻きつけ、大型環付カラビナをかけて、
引っ張られる方向に、大型環付カラビナを持ってくる。
3.谷側の足でピッケルを踏み、山側の脇の下からロープを出して、肩がらみの体制をとる。
その際、谷側のロープは、肩越しとなり、山側の脇の下からロープとグリップビレーの要領で、
2本をまとめて持つ。
4.さらに確保力を増したい場合は、ピッケルから出ている大型環付カラビナにムンター・ヒッチを行う。
○ ピッケルを支点にしての懸垂(新雪は、不適)
1.雪面を削り、ピッケルを横に埋める。その際、やわらかい雪を除いた後に、30センチ程雪面を掘る。
ピッケルを埋める際は、谷側の雪は踏まず角を残して抵抗とする。、山側の雪を踏んで固め る。
2.ピッケルの中心から120cmスリングをクローブ・ヒッチにして、溝を掘り斜面の下側に伸ばす。
3.スリングに大型環付カラビナをかける。
○ 急斜面のアイゼンとピッケルでの下降
下降時、短い急斜面は、ピッケルを前に撃ち込み、シャフトを持ち、下降する方法(ピオレランプと呼称)もある。写真
1.想像以上の急斜面であっても、腰を落としてアイゼンをフラットにして、ピッケルを活用すれば下降は 可能。とにかく練習が必要。
○ 雪面のカッティング
1.雪面をカットする場合は、ピッケルで左右に振り切ること。2.右上する場合は、左足は右足に重なるぐらいに少しだけ前に出す。右足左足より高くあげるが、そ れも20cm程度。
○ 自己脱出
1.メインロープの上側から60cmハーネスに短めのスリングをかける。
2.メインロープの上側から120cmスリングをかけて立ち上がる。
3.クレバス等からの脱出の場合は、メインロープの上側のフリクションヒッチをアブミの巻き込みの要領 で雪面から浮かした瞬間にずらす。
○ スノーボラード
1.雪面で支点がない時に有効。
2.クライアントをスノーボラードをピッケルでバックアップを取り、ロワーダウンさせる。
3.その後、ガイドは、ピッケルを抜いてスノーボラードからのロープを2本まとめてつかみ、補助代わり にクライムダウンする。
○ 雪面の下降
1.タイトロープで降りることができない急斜面の下降は、クライアントをロワーダウンさせた方が安全 で早い。
2.その場合、ガイドはより安全で構築が早い支点となるものを求めることを優先する。
3.クライアントは、一度のロワーダウンで可能な限り長い距離をおろす。その場合、可能な限り安 定した場所に下ろす。
4.ガイドは、クライアントを25m以上降ろした場合は、最後は、クライアント側のロープを張りながら、 降りていく。この場合は、必ずクライアントから目を離すことはできない。
5.この技術は、ガイドは絶対に落ちないという前提の技術なので、不安な場合は、クライムダウンす るなどより安全性を求める必要がある。