白馬主稜 【平成16年5月1日】

筆者:林 (やまねこJr)

  やまねこコンビでアルパインルートを登り始めて2回目の春山残雪期登攀を迎える。昨年のGWの鹿島槍ヶ岳東尾根、夏休みの槍ヶ岳北鎌尾根、年末の八ヶ岳主稜、石尊稜に引き続き今回は白馬岳主稜登攀と不帰ノ嶮・八方尾根への縦走に挑戦した。

期  間:平成16年4月30日(金)〜5月3日(月)

メンバー:CL 末永(やまねこ)39歳

     SL 林 (やまねこJr)52歳

     SL 栗山(栗ちゃん)65歳


4月30日 移動日

5月1日 白馬岳主稜登攀

5月2日 白馬岳〜不帰ノ嶮〜八方尾根

5月3日 帰任

4月30日

 末永、栗山両名は長崎からJR特急、林は対馬から高速船で博多集合。新幹線ホームで待ち合わせ。恋人に会うみたいに心ウキウキ。軽量化したつもりがザック20Kg超がんばって担がねば。新幹線「のぞみ」自由席、急行「ちくま」、JR在来線を乗り継ぎ翌朝5時36分白馬駅着。

5月1日

不要なものを駅ロッカーに預け、タクシーにて猿倉へ。

猿倉荘6:40⇒白馬尻7:50⇒主稜8峰10:00⇒白馬岳2932m15:34⇒白馬山荘(休憩)⇒村営頂上宿舎2730m16:30テント泊

猿倉荘前にて(末永・林・栗山)

猿倉から白馬尻までは、夏道通りにたどる事が出来、まったく問題ない。最高の天気で30分も歩くと汗だくだ。白馬尻の台地から大雪渓を横切り、主稜に取付く。

猿倉荘上部より白馬岳主稜を仰ぐ

白馬尻から大雪渓を仰ぐ

日本3大雪渓の一つ白馬大雪渓、さすがだ。剣沢大雪渓、針ノ木大雪渓これで全部確認できた。長崎の我々にはこの雪がたまらない。

白馬尻にて

                     

主稜への取付き(末永・栗山)

長い苦しい戦いの幕開けだ。

8峰手前で休憩する栗山

なかなか1番目のピーク8峰に到着しない。上部を行くのは先行パーティー。

8峰はまだか。息も荒れてきた。

岩場混じりの雪稜を行く末永、栗山

10m程度の潅木混じりの雪稜だが、右手東側の白馬沢側へスッパリ切れ落ちており、安全を期してザイルを出した。

8峰〜7峰、ザイル使用

6峰付近の急峻な雪壁

い登攀はまだ続く。

6峰付近より頂上を仰ぐ

所々雪壁がはがれ落ちて登りづらい。

5峰付近のナイフエッジ

                       

落ちると地獄行きだ。バランス取って、慎重に進む。

                        3峰を登る栗山、林

猿倉を出発してから8時間、疲れた。1歩1歩がしんどい。滑落だけはしないように。

                      3峰より頂上を仰ぐ

あと少しだ。頑張ろう。ビールが待ちどおしい。

最後の雪壁を登攀する栗山

                   

ラスト1ピッチ。主稜最後の難関、頂上雪壁だ。ノ―ザイルで行く事にした。日がかげり少し肌寒い。早く完登したい。ダブルアックスで1歩1歩慎重に登る。頂上の稜線が見えてきた。時計は午後3時30分を回っていた。

                        頂上直下を登る末永

歌の文句じゃないけれど「思えば遠くへ来たもんだ!!!」。ラスト5m。眼下には朝から登って来た主稜が、あたかもゴジラの背骨のように横たわっている。しんどい1日が暮れようとしている。

                    白馬岳頂上にて(栗山・末永・林)

厳しくも満ち足りた1日であった。

5月2日

 村営頂上宿舎5:30 ⇒ 杓子岳2812m ⇒ 鑓ヶ岳2903m ⇒ 天狗山荘2730m 8:26 ⇒ 不帰ノ嶮最低コル10:00 ⇒不帰ノ嶮二峰通過14:25 ⇒ 唐松岳2696m 15:35 ⇒ 八方尾根丸山ケルン2460m 16:30テント泊

朝日に映える白馬岳(杓子岳頂上より)

夜半から引き続き北西の風が強く、稜線歩きに難儀した。今日は不帰ノ嶮以外はアイゼンは必要ない。杓子岳頂上より、きのう登った主稜を目の当たりに眺め感慨深いものがあった。

                  鑓ヶ岳より見る立山・剣岳(2998m) 手前は天狗の頭に続く稜線

剣岳アップ

いつ見ても堂々としており、まるで「おやじ」の存在だ。今年の夏は写真右側に横たわる八ツ峰主稜に挑戦する予定である。

天狗の大下りから見る不帰ノ嶮二峰北峰・南峰                

不帰ノ嶮二峰北峰の我々の通過ルート   トラバース後に雪壁を登るルート

 天狗の大下りを最低鞍部まで下り、いよいよ不帰ノ嶮の通過である。

 唐松岳まで4時間を予定していたが、核心部の不帰ノ嶮二峰北峰の前半雪壁トラバース及び後半岩稜登攀(後半の踏み跡はトラバース後に雪壁を登るルートであったが、中間支点が確実な草付雪稜帯を右上して岩峰帯の岩稜登攀で上部に抜ける方法に変更)に必要以上の時間を費やし、北峰を抜けるのに4時間半も掛かってしまった。危険を少しでも回避する意味で良い方法だと思う。

 唐松岳の登りも疲れた足に非常に長かった。あとは本日のテント場八方尾根丸山ケルンまで下るのみだ。

 5月3日

 丸山ケルン7:00 ⇒ 八方池山荘1830m 8:20 ⇒ ゴンドラリフト経由八方町9:00 ⇒ 白馬駅前にて入浴後愛する家族のもとへ

 3者協議の結果、ゆっくり起きて汗でも流して、ゆっくり帰ろうとの事になり、5時起床の7時出発となった。きょうは神経を使う所がないので気分的に楽だ。ゆっくり下るのみ。しかしながら広い八方尾根のこと、ホワイトアウトにでもなればほんとに怖い。途中尻セードをしながら幼心に戻り、来し山々を振り返りながら文明の利器に世話になる事にした。ゴンドラリフトを3回乗り継ぎ、シャバへ。


雲海を背にした丸山ケルン

 尾根上は雪が解けており、快適なテント場を提供してくれた。

                    八方尾根から見た朝焼けに映える白馬三山

一番右のピークが白馬岳だ。あの主稜を登ったんだ。


八方尾根にて不帰ノ嶮をバックに

「それにしても良く歩いたなー」

白馬グランドホテルの露天風呂は良かった。白馬連峰を見ながらの風呂は疲れを一辺に吹き飛ばしてくれた。

 良い天気に恵まれ、メンバーに恵まれ、けがもなく、ほんとにすばらしい山行であった。

 あーア、また山に恋してしまった。