槍ヶ岳北鎌尾根【カシミールで作成】
山に登りはじめてまもなく、山岳書を読むようになった。新田次郎の『孤高の人』で加藤文太郎を知り、『単独行』を読む。
松濤明の『風雪のビバーク』。そして、いつしか多くの岳人がそうであるように北鎌尾根に憧れを抱くようになる。
本来ならば昨年登る予定であったが、直前にマムシの咬まれるというアクシデントにあって10日間入院したために、あらためて今夏登ることとなった。
メンバーは、長崎朝霧山の会の末永、林、栗山の3名である。
期間 : 平成15年8月9日(土) 〜 14日(木)
CL
: 末永
SL
: 林
渉外
栗山
8月9日(土)
対馬からジェットホイルで博多港、博多港からバスで博多駅、新幹線で名古屋駅
8月10日(日)
急行「ちくま」で松本駅、大糸線で穂高駅、タクシーで中房温泉
中房温泉発 1462m 7:30 ⇒ 合戦小屋 2383m 10:00 ⇒ 燕山荘 2699m 11:00 ⇒ 大天井ヒュッテ 2655m 14:15 ⇒ 北鎌沢出合着 1830m 17:20
当初、8日の高速夜行バスで名古屋経由で入山予定であったが、台風10号の影響を考慮して、翌9日に博多から新幹線、名古屋から急行「ちくま」で松本経由で入山した。今回は、対馬出発時点で予約しておいたタクシー会社から中房温泉への道路が雨の影響で交通止めになっているという情報が入るなど出発直前までいろいろ考えることが多く、少々気持ちがなえてしまっていたが、林さんのぜひ行きたいという気持ちが強く、交通手段と天気予報に不安をかかえつつ出発となった。
合戦尾根登山口
心配していた中房温泉への林道(全面舗装)の通行止めも解除されており、タクシーで登山口まで来ることができた。当初は、林道を歩くつもりでいたが思った以上に長く『あー良かった!』という気持ちだ。しかし、冬期はいずれにせよ歩かなければならない。
二人の笑顔がいいですね
第一ベンチにて
合戦尾根は、かなりの急登であるが、整備された登山道で休憩のためのベンチもある。
合戦尾根で見かけた高山植物
かなりの急登でしょう!
スイカで有名な合戦小屋
スイカは、1/8?で800円でした。
中房温泉から燕岳へ登る合戦尾根は、アベックや親子連れが多い。そのほとんどが縦走ではなくピークハントなのだろう。
合戦尾根からの槍ヶ岳
合戦尾根からの燕山荘
燕山荘からの槍ヶ岳
燕山荘からの槍ヶ岳 その2
燕山荘からは、千天出合から突き上げる北鎌尾根の先に槍ヶ岳を望むことができる。この日は、晴天ですばらしい展望があった。
ここで、大休止をとって大天井ヒッテを目指す。途中、ザイル、ヘルメット持参の登山者を何パティーが見かける。全て北鎌尾根を登る岳人のようだ。
話には聞いていたが、近年北鎌尾根を登る登山者が増えているようだ。かなりの高齢者のみのパティーも見かける。
縦走路にて
高瀬ダムを望む
槍ヶ岳と北鎌尾根
大天井ヒユッテ
大天井ヒュッテで水俣川の状態を小屋のご主人に聞いたところ、例年より水量が多く特に今日あたりは、降水直後なので遡行は困難ということであった。
ご主人の話を聞いて、湯俣経由にしなくて正解であったとホットする。とりあえず、北鎌沢出合までは何とか本日中に行かなければならないので気合を入れて先を急ぐ。
貧乏沢入口の標識
貧乏沢は、大天井ヒユッテから西岳へ向かう縦走路の最低鞍部2,549mから天上沢方面へ向かう沢で登山道は、拓かれてはいるが上部は小枝につかまりながらずり落ちながら歩く感じで、中盤は雪渓が残る部分を大巻きしながら、終盤は沢を歩けないところを小巻きしながら下降となった。今年は、冷夏で雪渓が通常より多いのかもしれないが、時期が早いと貧乏沢の下降は雪渓の処理が困難と感じた。
人それぞれとは思うが私は、今回の山行では貧乏沢の雪渓の通過が最も困難と感じた。貧乏沢からの北鎌尾根といっても安易に取り付くものではないと思った。
貧乏沢上部にて
貧乏沢からの北鎌尾根
貧乏沢と天上沢の合流地点
合流地点からしばらく遡行すると北鎌沢出合となる。出合付近には、いくつかの幕営跡地があるので比較的快適なテントサイトを確保することができる。ほとんど跡地には、焚火の跡があり我々も焚火で山行初日の疲れを癒やした。
台風10号の通過直後に湯俣から遡行してきた二人組みがおり、水量を聞いたところ腰あたりということであった。
初日を終えてくつろぐ栗山さん
沢での幕営ということで、水には困らず豊富な雪解け水で体の汗を流す。ところで、林さんは雪解け水がこれほど冷たいと思っていなかったらしくビックリしていた。
8月11日(月)
北鎌沢出合発 1830m 4:20 ⇒ 北鎌のコル 2472m 6:50 ⇒ 独標 2899m 10:05 ⇒ 北鎌平 2981m 13:07 ⇒ 槍ヶ岳 3180m 14:00 ⇒
肩の小屋着 3081m 14:20
11日は、天気予報では終日晴天であったが、出発直後から小雨模様となってしまった。雨具をつけようとしたがすぐに取り出せる状態でなかったためにそのままで歩いていたが、いっこうに雨はあがらず、雨具の上下を身に着けて時にはすでにかなり濡れており、稜線に出てからは濡れからくる寒さに震えることとなってしまった。
北鎌のコルの少し手前
北鎌のコル
北鎌のコルで大休止をとり、上下の雨具を着込み、ついでに登攀道具も身に着けた。
この日は、終日雨のため展望もきかなかったので、カメラはザックの中にしまいこんでおり、せっかくの北鎌尾根の雄大な写真がなく残念である。
北鎌平にて 寒い!
北鎌平にて 寒い! その2
稜線に出てからは、濡れきった体が冷えてとにかく寒かった。とにかく歩くのみ。
北鎌平からのガレ場
この日は、雨のために北鎌尾根のルートの詳細な記録をとるほどの余裕は、全くなかった。ただ、縦走後の感想は、晴れた条件が良い日は、ルートファイディングも時間をかけてできると思うが今回のように視界がきかない状態ではさらに厳しくなる。ポイントとしては、稜線を充実にたどることだと思う。もちろん、巻くこことも必要であるが概ね直登したほうが足場が安定していた。そのため我々は、2度懸垂下降を行った。北鎌沢経由の北鎌尾根縦走は、うまくルートファイディングを行えばザイルは必要ないということであったが、むしろ積極的に直登してザイルを活用したほうが、安全性は向上する感じがした。
この夜は、肩の小屋の幕営地でのテント泊であったが、ポールが折れそうなくらいのすさまじい風と雨であった。
8月12日(火)
昨夜からの雨が断続的に降っているので、氷河公園経由はあきらめてゆっくり槍沢経由で下山する。途中、昨年11月の雪崩で遭難された槍ヶ岳山荘の従業員3名の方々の捜索が雪渓上で行なわれていた。経験豊富な山小屋関係者までが雪崩の犠牲になることを考えれば、いかくに注意しても避けがたいものがあるように思われるが、今後もより慎重な行動を行い安全登山をと感じた。
この日は、小梨平のキャンプ場で風呂に入り、ささやかながら山行の打ち上げを行った。
上高地 梓川のほとりにて
今回のメンバー3人
末 永 林 栗 山