事故報告

   先日、マムシに咬まれて10日間入院するという事故に遭いました。今後、皆様の事故防止ともし事故が発生した場合に最善の処置ができれば幸いと思い事故内容等を公開致します。

事故発生日
平成14年8月4日(日)午前8時10分

事故発生場所
長崎県下県郡厳原町有明山(558m)付近

事故状況
平成14年8月4日(日)午前6時40分、厳原町日掛の納鹿橋から有明山(558m)へ延びる沢へ入渓、午前8時10分標高410m付近の直径1.5m程度のプール状地点で、そこを泳いでいる小魚を手づかみするために、草付きの下に両手をさし伸ばしたところ、水中で右手第四指(薬指)の先が刺されるような強い刺激があった。

受傷の経過
傷口が、2ヶ所であったためにマムシの可能性を考えていたところ、草付き下から出てきたマムシを確認する。
傷口を押さえて毒を押し出した後、稜線まで歩きそこから厳原消防署へ携帯から連絡するが、電波状況が悪く山頂まで行き再度連絡、山頂から1.5キロの林道まで救急車を要請。救急車に乗るまで約70分ほど行動する。
その後、救急車で病院へ搬送される。病院着9時50分。

受傷部位

応急処置 
マムシを現認する前から傷口が2ヶ所であったためにマムシと判断して、傷Aにつめを押し当て3分程度血液とともに毒を絞り出して沢の流水にさらす。口で毒を吸い出すことは行なっていない。少しでも早く病院へと言う気持ちでかなり早足で歩く一部小走りとなる。10分後くらいから腫れが出てくる。この時点で強い痛みはない。傷口から心臓側の圧迫は、受傷後、30分後くらいから肘下をタオルで圧迫すでにこの時点で肘下まで腫れ上がっていた。
 
症状 
病院へ到着時点では、すでに腫れは肘上まで達していた。
最終的には、背中のこうはい筋肉(右側のみ)と大胸筋(右側のみ)まで腫れが広がる。
眼の症状はなかった。
 
病名     マムシ咬傷     ツシママムシは、ニホンマムシとは別種    ニホンマムシ
血管毒であるマムシ毒によって出血作用、血管内凝固作用、筋凝固融解作用がある。
合併症としては、感染、腎不全などの多機能不全、筋肉融解症、神経障害等。
腎不全が発生した場合、人工透析が必要な場合もある。人工呼吸器を使用した例もある。
対馬でもマムシ咬傷による死亡例がいくつかあるようです。

治療経過 (専門家ではない私の記憶からの記述ですのであしからず。)
・局部を切開して毒素を押出す。
・すでに腫れは肘上まで達していたために血清使用を決定。アレルギー反応で陽性反応があったために薄めて点
  滴で注入。
・血清を点滴で注入
・破傷風抗毒素の使用
・セルテクト?500mlの点滴を1本
・初日の夜は、痛みが強くざ薬を使用
・8日間は、24時間2種類の点滴を連続注入
・抗製剤の点滴を8日間1日2本注入
・セフェラチン?を1日2回注射(点滴チューブから)
・セフェラチンは、途中からのみ薬へ
・尿は、1日で最高7,500ccもあった。
・ICUの5日間は、心電図を24時間セット
・血圧を1時間ごとに自動測定
・受傷部付近の腫れはひいている一方、腫れ(毒素?)は拡散していた。
・最終的に7日目で腫れはストップ
・脇腹に内出血の後が残ったが15日現在消滅
8月15日現在の症状(受傷後12日目)
・咬れた右の薬指は、なお腫れが残る。親指より大きい
・第一関節と第二関節の中間から指先までの手のひら側の下半分が神経麻痺
・職場の駐車場のロープを引っ張っただけで右手が皮下出血を起こした
・右手の薬指以外は、完全に腫れはなくなっているが、今でも熱を帯びている
・退院後の飲み薬
  朝・昼・夕  シプロキサン錠200mg、ポンタカールカプセル250mg、グリチロン錠剤
  朝・夕  セルテクト錠30
 入院期間     10日間その後通院
反省及び所感
見えないところに手や足をむやみに入れない
    応急処置については、本などによって様々のようですが、患部を冷やすことは誤りのようです。また止血ではなく圧迫ということです。その圧迫もしない方が良いと言うHPの解説もありました。傷口の切開は医療機関で現地では厳禁。毒素を口で吸出す事については実際どうなのでしょうか?いずれにしろ、虫歯や傷がある場合には厳禁でしょう。いろいろ調べた上で現在の症状を考えれば、1時間以上行動したことを除けば、決して悪くない応急処置だったと思いますが、慌ててしまったので一部小走りになる。
   医療機関へは、遅くと1時間以内にというHPの解説がありましたが山行時の咬傷ではほとんど無理ですね。私の場合は、1時間40分で自分でかなり早いと感じていましたが、担当の先生は、事故当日の所見で時間がたちすぎと何度も言っておりました。
   現在でも、患部の腫れと神経麻痺が残っていますので、止血するつもりで縛っていたら指の切断もありえたかもしれないと考えております。
   時間は、かかると思いますが指先の神経麻痺も完治すると確信しています。
 
マムシ咬傷は、全国で年間3,000人で死亡率は0.1%
対馬は、人口から見れば全国平均のたぶん何倍、いや何十倍も多い気がしています。

※ 今後は、対馬での沢登りは控えようと思います。

   いかに注意しても避けることはできない事故もありえますが、この事故を教訓にして今後注意していかなければと考えています。
退院後、本やHPでマムシ咬傷の応急処置を調べましたが、なかには正反対の内容が書いてあるものもありました。ここには、私が今後参考にしたいHPにリンクしておりますので興味のある方は、確認下さい。
    なお、この事故報告及びリンク先のHPの内容を参考にしての応急処置については、責任を持ちかねますのでご了承ください。

リンク

日本蛇族学術研究所(ジャパン・スネークセンター)

小救急医療プロトコール

マムシと眼

ポイズンリムーバー
私は、使用したことがありませんが、有効なのでしょうか?  一度安い方で試したことがありますが、使いものにならない気がします。高い方を今度購入してみようと思います。

北九州総合病院 救命救急センター 

ヘビに咬まれた、どうすりゃいいの?

蛇咬傷

有毒動物(AMDA熱帯医学データベース)

スネークウォッチング@毒蛇から身を守る「マムシ」特集

国産爬虫両生類同好会

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