槍ヶ岳山頂【平成7年9月】

期 間 :平成7年8月 〜 9月   5泊6日
              末永単独

   はじめての夏山に平成7年8月下旬から9月上旬にかけて出かけた。これまでの登山は、屋久島、久住、利尻岳ぐらい。とりあえず、高価なためなかなか買えなかったゴアテックスの雨具を買って不安なまま単独ではじめてのアルプス、北アルプス南部へ出発した。

1日目   上高地 ⇒ 徳沢園

   この時は、東京出張に合わせ遅い夏休みをとり出かけたために、新宿から夜行バスで早朝の上高地へ着いた。はじめて見た大正池は、あさもやの中で神秘的な感じがする。バスターミナルは、早朝だというのに多くの登山者がおり、それぞれの登山者の装備をめずらしく眺めた。登山届けを記入して、もしもの時は、計画書を提出しているかしていないかで大きな違いがあるのだということを考えながらボックスへ投入する。

上高地バスターミナル

   この日は、夜行バスの疲れもあるし、とにかくはじめての上高地なのでのんびり観光しながら徳沢園を目指す事にした。

河童橋にて

   モンベルの70gザックがかなりふくれあがっている。重量にして35`位あったのではないだろうか。とにかく、徳沢園までの平坦な林道歩きで、ショルダーベルトが肩にくいこみ重たいうえに痛くてしょうがなかった。徳沢園に到着するといくつものテントが張ってあり、学生時代に北海道をバイクでツーリングしたことが思い出される。ここのすぐ横には、小川が流れており岩魚も泳いでいる。じつは釣竿も持ってきていたのだが、禁漁となっているのであきらめることにして、水着も持ってきているので梓川で泳いでみるのもいいなあと思っていたが、ところがどっこいあまりの冷たさに驚いてしまった。雪解けの水がここまで冷たいとは。九州生まれの自分には想像がつかなかった。それにしても梓川のなんと美しいことか。水も冷たくて美味しかった。もちろん、この時は大腸菌が多く飲料水に適さないとは全く知らなかった。
   

   夕方から雨となり、10年以上使用しているシュラフのために寒い夜を過ごすこととなった。

   

2日目   徳沢園 ⇒ 稜線上(蝶ガ岳と常念岳の中間地)

   朝起きてみると外は雨、出発しようか迷ったが実質的な初日となる日から停滞ではと思い、また雨具も新調しているので雨の中、急登の長塀尾根をひたすら登る。どうも夏風邪をひいたらしく、体がだるくてしょうがない。そのうえにザックの重みと雨のためにフラフラになりながら歩き続ける。やっとの思いで蝶ガ岳にたどり着いた。

蝶ガ岳山頂にて

   この日は、本当は常念岳を越え大天井岳まで行く予定でいたがとてもこの体調では無理だとあきらめ、常念小屋までと思い歩き続けるがますます体調が悪くなってきたので、14時前に幕営指定地以外であるが蝶ガ岳と常念岳の中間地点にテントを張ることにした。ここで一晩明かすには、手持ちの水が少ないので、登山道に溜まった水を沸騰させコーヒーのフィルターでこして使用した。それでも透明にならなかったので、パスタと紅茶で昼食兼夕食をすませ日暮れ前から就寝する。

3日目   稜線上(蝶ガ岳と常念岳の中間地) ⇒ 大天井岳

   この日は、前日に早めに幕営して十分に休養をとったおかげで体調も戻りザックの重みにもなれてたいぶ楽に歩けるようになった。常念岳の登りは、大きな岩がゴロゴロしており、『岩が崩れることなどないだろうあな。』とすこし危険を感じながら歩く。この日は、昨日の雨が嘘のように天気がよく空気も澄んでいて眺望は抜群だ。山頂でいっしょになった日大山岳部OBの方もこんなに眺望がきくのはめずらしいということであった。『やっぱり、山は天気が良くなくっちゃ』

常念岳山頂

   今日の目的地を大天井岳してのんびり行く事にきめ、常念小屋前で大休止をとって、テントとシュラフを乾かす。その間、昼食のラーメンを食べる。常念小屋にも入ってみる。はじめての山小屋なのでめずらしい。

常念乗越にて

  ここから大学山岳部の合宿前にコースの下見に登ってきた学生と大天井岳までいっしょに歩く。先日まで北海道で2週間の合宿だったそうだが、ずっと雨で寒くてたまらなかったらしい。昨日、一昨日の事を思うと想像するだけで寒そうだ。装備が濡れると山行が非常につらいものになってしまうものだ。     
   ここまで多くの登山者にであったが、私より重そうなザックを担いでいる人をようやくみつけた。さすがに年間160日山に入っている現役の山岳部員でもこれだけの荷物を背負うとなかなか歩くのがつらそうであった。その様子をみて、安心すると同時に軽量化の重要性を再確認する。

   ともに歩いてきた学生は、大天井岳で別の山岳部員1人と落ち合い大天井岳で幕営の後、西鎌尾根をこえて双六岳の方へ行くということである。この日は、学生にカレーをごちそうになる。もちろん学生のカレーは、レトルトでもなく、野菜は生でご飯も米をたいたものであった。その点からみれば私は、フリーズとレトルト食品なので、今後かなり軽量化がはかれるようだ。

稜線上(蝶ガ岳と常念岳の中間地)の幕営時のテント内部

   この時の山行では、衣類も化繊ではなく全て綿であったために多量の着替えが必要だった。この後、あらゆる装備を新調した。

4日目  大天井岳 ⇒ 燕岳経由 ⇒ ヒユッテ西岳

   この日は、まだ暗い内からサブザックで燕岳を目指す。その途中で朝日を見る事ができた。

燕岳山頂にて

ふたたび大天井岳に向け来た道を引き返す。このとき西側と太陽があたっている東側の体感温度の違いに驚く。稜線上であれば数歩あるくだけでこれだけの違いあるのだ。
   十分に乾いたテントを急いでたたんで先を急ぐ、途中何度か休憩はしたが、ヒユッテ西岳までひたすら歩き夕方4時少し前に到着。ここで、気圧の差でパンパンに袋が膨らんだクロワッサンと牛乳を買う。なぜか山に登るとパンが食べたくなるようだ。
    私の山行時の楽しみは、幕営地に早めについて、小屋の従業員さんとか周囲の登山者との会話である。そして、夕日に沈む山々を見ながら30分くらい時間をかけて歯を磨く事だ。日常では、なかなかここまで時間をかけて磨くことはないが、なぜか山を見ながら磨くと時間が苦にならないものだ。

   この日の夜は、本当に寒くてたまらなかった。全ての服を着込んで、シグボトルを水筒にしていたので何度もお湯を沸かして、湯たんぽかわりにする。やはり、10年以上使用している化繊のシュラフではこの時期のアルプスでは、無理があるようだ。ザックから全て荷物をだして下半身をいれるがそれでもだめ。ゴアの雨具を着るがそれでも寒い。最後に大きなスタッフバックに下半身をいれたが汗で濡れてしまい逆効果だった。この夜、シュラフを購入する決意をする。

5日目   ヒユッテ西岳 ⇒ 槍ヶ岳 ⇒ 小梨平

   早朝にヒユッテ西岳を出発して、険しい東鎌尾根を歩き槍ヶ岳を目指す。途中、殺生ヒユッテで大休止をとってうどんを食べる。たしか800円ぐらいだったと思う。お茶も3杯くらいおかわりして飲んだので、お茶が1杯200円と書いてあったので、お茶代も別に請求されるかなあと思っていたが、うどん代だけで助かった。なにせ、はじめてのアルプスで何も分からないので不安なのだ。また、水がg200円もしたのにはビックリした。しかし、今思えばみた北アルプス南部が最も水事情が悪いようだ。その他の山域では、案外水場があるように感じている。

   ようやく肩の小屋に到着して、サブザックで槍の穂先へ登る見た目よりかなり登りやすく全く問題なかった。しかしながら、毎年落石事故があっているので慎重な行動が必要であることは言うまでもない。山頂の岩場に溜まった水が、9月上旬であったが凍っていた。下界ではまだまだ夏の感じがするのだが、3000mの山は、秋を通り過ぎて冬が近い感じだ。

槍の肩から山頂を望む

槍ヶ岳山頂【平成7年9月】

   槍ヶ岳からは、当初の計画では西穂高岳まで縦走の予定であったが、途中知り合った方から『その荷物では、やめた方が無難』と忠告を受け、自分でも経験不足と感じ次回の課題として残す事に決め、あっさりあきらめ槍沢経由で下山する。横尾から小梨平までは、ほとんど走った。その時以来、単独行の夏山では、いつも帰りの林道を走っている。

   キャンプ場の風呂で5日ぶりの汗を流す。ここは、登山者だけではなくキャンプのみを楽しむ人もいる。近ければキャンプ目的でも来たいところである。

   はじめてのアルプス登山も何とか無事に終了することができ、平成13年の夏山までアルプスの夏山5回、秋山1回、冬山5回、春山1回を経験する事ができた。今後もトレーニングを重ね登山を継続していきたい。ちなみに平成13年の夏山は、6泊7日でザックは、50gで重量は20`未満であった。